ギアギアの趣味めいたブログ

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岸辺露伴は動かない 短編小説集(4)

ドーモ、読者=サン

ギアギアッチョです。

 

ウルトラジャンプ2021年11月付録、

岸辺露伴は動かない”短編小説集(4)を読了しました。

今回は北國ばらっどサンの短編2本が掲載されております。

 

これまでに数々の作家サンが露伴先生の短編を書かれていますが、

みな共通してジョジョの世界観、露伴先生のキャラをしっかりと描かれています。

作家サンは表現力はスゴイものだと脱帽しながら楽しく読んでいます。

 

今回の短編集の話は以下です。

・黄金のメロディ

・原作者岸辺露伴

 

岸辺露伴は動かない”は岸辺露伴を主人公とするスピンオフ作品です。

NHKで去年実写ドラマ化されました。

主演は高橋一生サン。岸辺露伴役がピッタリハマっており、見ていても違和感なく、実写化として大成功だったと思います。

製作陣の、ジョジョの世界観を崩さずにドラマとして仕上げる、という意気込みを感じるモノになっていたと感じます。

 

まぁ、ドラマの話は置いておいて、

このスピンオフ作品は、

岸辺露伴が数々の怪異と遭遇し、それをヘブンズ・ドアーで回避する

というモノとなっています。

基本的には露伴先生は狂言回しであり、事件の根本を解決するわけではないのです。

故に「動かない」

露伴先生はネタ集めのためだけに怪異に近づいているので、根本を解決する必要はないのです。

まぁ、遭遇するものはヘブンズ・ドアーでも解決不可能なモノばかりですが。

 

露伴先生の遭遇する敵は、

人智の超えた高次元的な生き物や神や悪魔に等しいモノ

➁世界の理として存在する理不尽な超常現象

③何かを極めすぎ/求めすぎて、もはや人間とは呼べなくなった人間

④人間の手におえない危険な生物

主にこのようなモノたちです。

今回の作品に登場する怪異は③「人間ではなくなった人間」です。

 

「黄金のメロディ」

ノイズを完全に消し去った完璧なる純粋な「音」

黄金比によって成り立つ完璧な「メロディ」

純粋な音で黄金比で成り立つ「黄金のメロディ」を聞く。

この目的のために人間性や人間としての外見を捨てた男「伊坂恭明」

露伴先生がこの男の狂気に巻き込まれる話です。

この話ではまさかの泉京香が登場します。

富豪村で登場した女性編集者にして、荒木先生もイライラしながら書いたという隠れた名キャラです。

ドラマではレギュラーになっています。

 

「原作者岸辺露伴

露伴先生がデビューの時にお世話になった編集長「白原端午」にかつての短期連載「異人館の紳士」の実写映画化を持ちかけられる場面から始まります。

露伴先生は丁重に断るのですが、端午は「実写化は浪漫であり、莫大な利益を生み出すモノ」であるとし中々折れません。

しかも異人館の紳士は7年前にドラマ化が決定し、実際に撮影が進んでいたがとある”事故”のせいでドラマ化の話が無くなった逸話があるようです。

7年前のドラマ化は許可したのに、なぜ実写映画化の話は断るのか

という端午の言葉に、露伴先生は7年前に起きた”事故”の話をするー

という内容。端午編集長が良いキャラをしています。

 

以下、ネタバレも踏まえた感想となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[警告]これより先は読んではいけない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スボンのチャックを開けたオヤジが通った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クシャミをした。ちくしょーと言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の人がクスクス笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレを読んだ。

ギアギアッチョにネタをバレされた。

 

「黄金のメロディ」

7年前。岸辺露伴20歳。

「レッドツェッペリン登場」の初回盤レコードを手に入れた露伴先生。

レッドツェッペリンの大ファンであるマンガのキャラに生々しさを与えるため、このレコードを最高の機材で聴き音楽の「最大の感動」を得ようと、

マニアに評判の「サカモチレコード」を訪れます。

そこで出会ったのが「伊坂恭明」。サカモチレコードの店長です。

恭明は田舎の名家の末裔であり、三人兄弟の末弟。

つまりはボンボンです。一度は音楽の道に進もうとしたが、才能の無さと人間嫌いが災いし、田舎のオーディオ機器店にコネで就職した経歴の持ち主。

田舎故にお客が来ないオーディオ機器店であったが、恭明が始めたネット通販が大成功。サカモチレコードはマニアに評判の店になりました。

 

しかし人間嫌いの恭明。接客態度は最悪。

専門用語と音楽知識をまくしたて、一定以上の知識を持つ客しか相手にしない。

客に商品を売らない、

つまり音楽屋として客に上質かつ最高の音を聴かせることを放棄する

恭明の”プロ”意識の無さを露伴に指摘され、恭明は初めて”プロ”として露伴先生に

最高のオーディオ機器を売却します。

そしてこれが恭明の「最高の音」への追及のきっかけとなり、街一つを滅ぼすに至るのです。

 

7年後ー現在

岸辺露伴27歳。

新しい編集者「泉京香」との打ち合わせ。

京香は露伴先生にサカモチレコードから手紙が来たことを伝えます。

手紙の内容は”招待状”。

一週間後の午後4時、金環日食の日に露伴先生をサカモチレコードに招待したいとのこと。

更に京香から、

サカモチレコードのある町は、サカモチレコード以外の建物、民家が一斉に立ち退き

しているとのこと。

無人になった町に1件だけ佇むサカモチレコード。

ネタになりそうな予感を感じた露伴は京香と共にサカモチレコードを目指します。

 

サカモチレコードのあるT県昼子町坂持にやってきた、露伴一行。

坂持では携帯は県外であり、吐しゃ物を吐いて死んでいる猫の死体が転がっていたりとかなり不気味。

不審に思いながらもサカモチレコードを目指す一行の前に姿を現したのは、

頭を大型スピーカーに覆われ、背中にはレコードプレーヤーとバッテリーを埋め込み、

手足にはケーブルが巻き付いた”オーディオ人間”と化した伊坂恭明なのでした。

 

”感想”

オーディオ人間とかした恭明は武器人間を想像してしまいます。

恭明の目的、それは完璧にノイズを取り除いた純粋な音で黄金のメロディを聴く

ただそれだけです。

そのために恭明は己の体を捨て、他の人間を殺めたりもしました。

音は波であり、音波は魂に干渉するエネルギーであると持論を展開する恭明。この部分は”波紋”とも結びつきます。

泉京香は恭明に「ノイズ」として首を絞められるのですが、恭明から流れる「純粋な音」により「恐怖」よりも音により得られる「快楽」が勝るという体験をします。

首を絞められ苦しいのに、楽しくて踊っちゃうんですよ。

死への恐怖すら乗り越える音波の力。

そのような音で黄金のメロディを、金環日食というノイズが無くなる最高の環境で聴いたならー

酸素は生き物が生きる上で必要不可欠なモノですが、純度が高いと猛毒になる。

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純度の高い、無限に続く黄金比のエネルギーである音波。

人間の体はそのような音に耐えることはできません。

露伴は恐怖を覚え、完璧な黄金のメロディを鳴らそうとする恭明を止めようとします。

しかし、恭明は「黄金のメロディを聴くのは自分だけである」とし、露伴を呼んだのは

自分が完璧な黄金のメロディを作ることができた/聴くことができたという「真実」を露伴に知ってほしかったためと告げます。

 

露伴はその頼みを聞き入れ、恭明がヘッドホンで黄金のメロディを聴き、精神が崩壊し事切れるさまを見届けるのでした。

 

恭明は純粋な音を求める追及者となりましたが、人を殺めたり自分の体にオーディオを埋め込むなど”一線”を超えてしまいました。

露伴もマンガのためにかなり踏み込んだ取材をしますが、ギリギリ人間性を失わないところで踏みとどまっています。その一線を踏み越えると、追及者は悪に代わります。

純粋な音のために自らを悪に堕とした恭明はこうなって当然ですが、どこか切ない幕切れとなりました。

 

 

「原作者岸辺露伴

岸辺露伴はデビュー時にお世話になったかつての編集長「白原端午」に呼ばれ、杜王グランドホテルのレストランで打ち合わせを行います。

内容はかつて露伴が短期連載していたマンガ「異人館の紳士」実写映画化の話です。

きっぱりと断る露伴に対し、実写化は作家の夢だろ!浪漫だろ!と詰め寄る端午

実写化が不安なのはわかるが、撮影技術の発達もあり、確実に露伴の世界観を再現できる、再現"可能"と豪語する端午露伴は、

”危険性"の話をするのでした。

 

7年前。岸辺露伴20歳。

異人館の紳士ドラマ化の企画が立ちあがり、露伴は「撮影現場の雰囲気の取材」を条件にドラマ化を承諾します。

"撮影現場取材のためにドラマ化を許す"あたり、露伴らしさを感じます。

撮影スタッフは、

・プロデューサー 北本壮介

 プロデューサーとしてドラマ作成にプロ意識を持っているが、人使いが荒く、立場が

 上の人間にはへつらうタイプ。

 

・主演俳優(異人館の紳士役) 國枝原登

 露伴も認めるほど演技が素晴らしいが、自分以外の人間を下に見ている増上慢

 マネージャーやADをいじめている。

 作者、北國ばらっどサンの名前をもじっていますね。

 

・太ったAD 小原夢生

 かつて俳優志望だった男。病気のせいで太り俳優を断念したが、映像業界に携わりた

 い一身でAD職に就く。國枝にいびられている。

中々濃いメンツ。

 

異人館の紳士は、

コオロギの声を聴くとカメレオンに変身する「溝呂木敏夫」や、土地や物体を枯らす力を持つ「オロボグ」、使っても使っても増え続ける紙幣を物理的に押し付ける「ミラグロマン」、異次元の部屋に60年閉じこもる「真上徹」などが住まう異人館で、支配人の紳士がそれらの怪人たちをかかわっていく話のようです。

普通に面白そう。

ミラグロマンは草。

各怪人役の俳優は用意されていたが、オロボグ役の俳優が麻薬で捕まってしまい、代役がいない状況。

露伴は北原に「代役」は決まったのか、異人館の紳士という作品のオロボグというキャラクターを”ないがしろ”にしていないか(オロボグを登場させないつもりではないか)ということを問います。

それに対し北原は「対処」はできていると伝えます。

 

國枝はAD夢生が用意した水が「硬水」であることに腹を立て、夢生を豚扱いしてペットボトルで殴りつけます。

好きな俳優がこんなだったら凄いショックです。

若い女性ヘアメイクさんにペットボトルでジュースを飲ませるように命じる國枝。

普通にセクハラです。ヘアメイクさんが國枝にジュースを飲ませようとしたそのとき、國枝の体のありとあらゆる部分から水分が漏れ出し、國枝はミイラのようになってしまいます。

スタッフそっちのけで救急車を呼びに行くと現場を逃げ出す北原も、同じ現象で体から水分が漏れ出しミイラのようにカラカラになります。

何が起きたかわからず戸惑う露伴とスタッフの前に姿を現したのは"怪人オロボグ"でした。

 

"感想"

オロボグの正体は小原夢生です。

オロボグ役の俳優が麻薬でドラマ降板になったと聞き、夢生は自分ならオロボグができると北原に提案していたのでした。

北原は衣装や小道具を自分で用意出来たらオロボグ役をさせてやると夢生に言い、

夢生は原作を読みふけったり衣装・小道具も自作して頑張ります。

諦めかけていた俳優の夢を再びつかむチャンスが来る、となった夢生の嬉しさは計り知れないものであったことでしょう。

しかし、北原は「本気にすると思わなかった。お前がうっとおしいから適当なことを言った」と告げ、國枝も「お前ごときと共演したくない」と言い離されてしまう夢生。

夢生は自分が"ないがしろ"にされたことに怒りを覚えます。

また北原は"対処する"と言っておきながらオロボグを登場させない腹積もりでした。

周りから"ないがしろ"にされた夢生、またドラマから"ないがしろ"にされたオロボグ。

夢生は自身をオロボグに重ね合わせすぎてしまい、ついには"オロボグの化身"、オロボグそのものとなっていまいます。

 

思い込みの力。プラシーボ効果と呼ばれます。

なんの変哲もないラムネを薬として適用された患者が、そのラムネにより病気が快復したという話があります。

思い込むということは人間の力を増幅させる何かがあるのかもしれません。

東方project霊烏路空というキャラクターがいます。

このキャラは元が地獄烏という妖怪なのですが、自身を火の神"八咫烏"であると思い込まされ、実際に八咫烏の力を手に入れました。

夢生もこのパターンです。

思い込みにより自身を怪人に変貌させた男。

 

オロボグはクズ共にドラマ化を任せた原作者露伴を"作品をないがしろにした"と称し、襲い掛かります。

このオロボグと露伴の戦いが面白い。ジョジョ特有の、

勝ったと思ったら敵がまた動き出す、策を凝らして撃退、しかし敵はまだ襲い掛かってくる

といった戦いが二転三転する様子を表現しています。

これは実際に読んでいただきたい。戦闘シーンからジョジョらしさを感じる話でした。

 

 

 

"実写化"と聞くと私は不安を覚えるタイプです。

それはなぜか。実写作品が原作を"ないがしろ"にしていることがあるからです。

露伴先生はこの作中で"キャラクターは生きている"と言っていました。

私もこの考えを持っております。

作品、キャラクターは作者が生み出すものですが、それを受け取る私たちの中でキャラクターは生き物として定着します。

キャラクターの生い立ちや性格などを無視して、そのキャラクターが普通では取りえない言動を行わせること。

これすなわち、キャラクターの人格や人生を否定することになります。

また、世界観に合わない謎の新キャラなどぶち込んでくるということも、原作を否定することになります。

原作レ〇プという言葉があります。原作に対しレ〇プを行い、その作品を台無しにすることの例えですが、この言葉は原作を人物に見立てています。

大事な人がレ〇プされると、したやつを殺したくなるのは当たり前の話です。

原作とキャラクターに敬意を払うこと

これができない実写作品はただのレ〇パーです。

 

しかし、私は原作厨ではない。

監督や作者がこう言っているから、という言葉で思考停止するのは大変つまらない。

自分なりにキャラクターを考察し、咀嚼することで人々の中に人それぞれの思い描くキャラクターが生成されるのです。

世界総人口はおよそ76億。単純に76億もの考え方があり、下手すると同じキャラクターでも76億のキャラクター像が存在している。

それらすべてに納得がいくように作品を実写化するー

実写化とはかなり難しいことなのです。

 

感想は以上

 

ここからは話変わります。

ウルトラジャンプ1月号よりカラスマタスク先生&上遠野浩平先生タッグの四部スピンオフが始まります。

舞台は四部。仗助のスタンドがクレイジー・ダイヤモンドと呼ばれる前の話とのこと。

高校生になる前の話かもしれません。

このタッグなら間違いなく世界観を崩さないと思うので、今から読むのが楽しみです。

 

また、NHK岸辺露伴が動かないの新作ドラマ3作品の放送があるそうです。

ゲストは各話それぞれ笠松将サン、市川猿之助サン、内田理央サンとなっています。

ぬーん。

何がドラマ化されるのか気になる。

個人的には血栞塗が好きなので、内田理央サンの回は血栞塗になってほしいと思います。

笠松サンだとザ・ランか検閲方程式かな?猿之助サンだと幸福の箱とか、シンメトリー・ルームか。まぁシンメトリー・ルームはセットが大掛かりになりすぎるから無理かも。

 

というわけで、スピンオフ、動かない新作ドラマ、ジョジョリオン最終巻、ストーンオーシャンアニメ化など、これからも楽しみが続くジョジョワールド。

一生追いかけていく所存である。

 

では、サヨナラ!